そして生活の場。
ノマド(遊牧民)という、居住地や活動拠点に縛られない生き方が模索されてきたけれど、これまでなかなか根付いてこなかった。
やはり、この国で安心して生きていくためには定住の地が必要なのだろうか? そのようなことを考えていたところ、2020年の春先から新型コロナウイルスによる感染拡大が始まり、テレワークという働き方が推奨されるようになった。それは主に在宅勤務を意味していたが、「ワーケーション」つまり“work”と“vacation”を合わせた、地方の都市や自然の中に滞在しながら仕事をするスタイルにもつながった。
そうしてみると、私たちが愛してやまない神奈川と、富士から伊豆にかけてのエリアには、ワーケーションに適したところがたくさんある。週のうち何日かは会社に出かけ、何日かはお気に入りの土地で生活を楽しみながら仕事をする、なんてことも普通にできる。
ネット環境が整うにつれ、仕事と遊びと生活の場が離れているほうがいいのか、近いほうがいいのか、といった物理的な距離はあまり大きな意味をもたなくなった。重要なのは、仕事でも遊びでも「そこに心の置き場があるか、ないか」なのだ。
今号の特集では、そうした場所として伊豆の下田市を選んだ人びとにご登場いただき、お話をうかがった。