ともに国内外での演奏活動や国際コンクールの審査員など、多方面で活躍する北川森央さんと碓井俊樹さんは、下田市民文化会館を会場に、オーケストラからソロ演奏まで、さまざまなタイプのコンサートを重ねてきました。
「東京藝大の学生が結成した海の物とも山の物ともつかぬオーケストラ(現・横浜シンフォニエッタ)を、音楽に造詣の深い会館のプロデューサーが呼んでくださったのが始まりです」(北川さん)
これまでに開催したコンサートのプログラムは、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ムソルグスキー、ストラヴィンスキーなどの作品。ステージで感じる手応えが、選曲を多彩にしています。
「下田は歴史の深さが伝わってきます。世界のどこでも歴史がある街は、降り立った瞬間にポテンシャルを感じるんですよね」(碓井さん)
若手の演奏家を中心にコンサートを開く機会が増え、下田は“音楽の街”になっていきました。
「東京藝大には、世界的な鍵盤楽器奏者で音楽学者の小林道夫先生が率いる、東京藝術大学バッハ・カンタータ・クラブという活動があります。ヨハン・セバスチャン・バッハの宗教曲を学び、演奏するのですが、あるとき、小林先生が合宿を希望されました。何日か集中的に研究して、最終日は演奏会をしたいと。風光明媚で、地元の方が演奏会に来てくれるところとなると、私には1か所しか思い浮かびませんでした」(北川さん)
そうして2008年に始まった「小林道夫サマーアカデミー in 下田」は恒例となっています。
2015年に初めて開催された「下田音楽コンクール」(現・下田国際音楽コンクール)も、特色ある音楽イベントです。
「下田に恩返しをしたいと思い、下田に人を呼ぶ方法を考えました。都会でやるわけではないので、どれだけの人が集まるか、実験的に始めたのですが、優れた演奏家が競う国際コンクールになっています。香港からの参加が多く、2019年は約40人がやってきました。空港からレンタカーを運転してくる参加者もいますよ。2020年は新型コロナの影響でオンライン形式にしたところ、11か国からエントリーがありました」(碓井さん)
黒船の来航から170年近くが過ぎたいま、Shimodaの名は、音楽を通して世界に広まっています。
下田市民文化会館/横浜シンフォニエッタ
下田市民文化会館の愛称はマイマイホール。大ホール、小ホール、会議室などを備え、住民参加事業、コンサート、寄席などを開催している。横浜シンフォニエッタは1998年、TOMATOフィルハーモニー管弦楽団として東京藝術大学学内にて創立され、2005年、現名称に改称。下田市民会館ではハイドン「天地創造」、モーツァルト「大ミサ曲」など多数の演奏会を行っている。