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  ■音楽の贈り物

         第7回
 映像的なイメージの広がる新作を発表した沢田穣治さんが
  贈り物にしたいほど大好きな1曲を紹介してくれました。
 ショーロ・クラブのコントラバス奏者であり、作編曲家としては現代音楽、ロック、童謡など、振幅の大きな活動を続ける沢田穣治さんが4作目のソロ・アルバムをリリースした。新作『Opera´rio(オペラリオ)』はこれまでと異なり、ライブでも演奏できることを前提につくられている。
「いままでは自分の音楽をダイレクトに伝えるのが恐くて、ソロでライブをやるのがいやだった。ショーロ・クラブでライブの楽しみも恐い部分も知っていましたから。でも、それではいかん、ひと皮剥けないと、と思ったんです。5人のメンバーで音をつくっていくというのが今回のコンセプトでした」
 沢田さんの書いた譜面を基に、ギターの秋岡欧、チェロの柏木広樹、ピアノの高島正明、パーカッションの岡部洋一というヴァーサタイルな腕利きとアイディアを出しあい、仕上げていった音楽は、躍動的なリズムの曲から静寂感を醸す室内楽まであり、多彩だ。しかし、どの曲も映像的なイメージを喚起する点が共通する。
「そういうふうに思ってもらえたら、同じ感覚のところで聴かれているという感じで、すごくうれしい。それは狙っているところですわ」
 ハーモニクスを用いて緊張感のある和音を響かせたピアノがゆっくりと美しいメロディを奏ではじめ、12弦ギターやチェロが加わっていく「Azul escuro」は、海の中を漂うイメージ。ほかにも「rain drop」や「Quarto do lado do mar〜海の見える部屋〜」というタイトルの曲があるなど、水を連想する曲が目立つのも新作の特徴だ。また、「poema de baleia〜くじらの詩〜」ではクジラの鳴き声が聞こえるように、想像力を刺激する楽器以外の音が数曲で使われているのも注目できる。
「聴き手を遥かほかの場所へ連れていきたいんです。それに僕も飛びたい。自分がまず聴きたい音楽にするというのが前提ですよ」
 自分が聴きたいものをつくるという純粋な創作衝動から生まれたアルバムには、現代音楽、フランス印象派、70年代のECM(ドイツのジャズ系レーベル)サウンド、アヴァンギャルドなプログレ、ブラジル音楽ほか、沢田さんが聴き込んできた多様な音楽からの影響が見て取れる。
「どんな音楽でも、ひかれる部分の本質っていっしょなんですよ。ノイズ・ミュージックも好きなんですけど、ノイズってある意味、ダーティなイメージがあるじゃないですか。僕はそこに美しさを求める。美しさというのは、ただ単にきれいなだけではなんの魅力も感じない。そのなかに一濁の汚物がある、危なさがある。それにひかれるんですよ」
 沢田さんが選んだ贈り物にしたい1曲は、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」だ。
「人によってはダーティと聴く人もいるし、美しいと聴く人もいると思う。僕はこの曲と遺作の<エア>を聴いたとき、なんかわからんけど、ボオッと泣いてしまった。少しの非日常をあじわいたい方に聴いてほしいですね」
(インタビュアー 浅羽 晃)
非日常をあじわいたいなら
弦楽のためのレクイエム
『レクイエム』 武満徹 小澤征爾指揮-サイトウ・キネン・オーケストラによる「弦楽のためのレクイエム」など、武満徹(1930-1996)の代表作を集めた追悼盤。遺作のフルート作品「エア」も収められている。

沢田穣治
兵庫県尼崎市に生まれる。笹子重治、秋岡欧と1989年に結成したショーロ・クラブではコントラバスを担当。ノイズ音響系の『Enfant Terrible』など、これまでに4作のソロ・アルバムを発表するほか、レコーディングやコンサートの編曲では小沢昭一、バッファロー・ドーター、ドリームズ・カム・トゥルーなど、幅広いアーティストをサポート。今年9月23日、横浜文化振興財団主催「Just Composed 2002 in Yokohama」委嘱作品をみなとみらいホール小ホールで初演する。

『Operario』

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