1994年に4人編成でスタートして以来、トーマス・ローダーデールさん率いるピンク・マティーニは13人編成の小オーケストラとなった現在も、オレゴン州ポートランドを拠点に活動している。驚くのは、すべて自主レーベルからのリリースにもかかわらず、過去3作がフランスなど各国でヒットし、200万枚以上を売り上げていることだ。
「売れるとはまったく想像していませんでした。私たちのファンはダウンロードの時代にディスクを買ってくれる最後の世代なんじゃないかな。だから全部、アナログのLPも出しています。オレゴン交響楽団のメンバーとワインバーの経営者がいますが、ほかは全員がフルタイムのメンバー。レーベルで働いている人も含めると20人が暮らしていけているのだから幸運だと思います」
ジャズ、ラテン、クラシック、ラウンジ・ミュージックなどの要素が混在する音楽は無国籍でノスタルジック。雑食性と特異性を端的に物語るのが昭和歌謡の日本語によるカヴァーだ(3作目までに各1曲ずつ収められ、4作目『草原の輝き』の日本盤にはボーナス・トラックとして全3曲を収録)。「タ・ヤ・タン」は69年にリリースされた由紀さおりのシングル「天使のスキャット」のB面曲。レコーディングを希望したローダーデールさんのマニアックな好みが伝わる。
「ジャケ買いをして、じっくり聴きました。メロディの美しさやプロダクションの水準の高さもありますが、ほかの国にはないタイム感が素晴らしい。バックの演奏とちょっとテンポをずらす歌い方がとても気持ちいいのです」(インタビュー室に由紀さおりのオリジナルを流しつつ、身振り手振りを交えて熱弁!)
贈り物にしたい1曲は、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を選んだ。
「私の友だち、みんなに贈ります。12歳の頃から演奏していて、多くの思い出があるのです。いろいろなヴァージョンを試みて、どんどん自分の解釈がよくなっていると思います。いまはサーフ・ヴァージョンをつくっているんですよ(笑)」
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