デビュー以来、オーガニックな味わいのオリジナル曲によって独自の世界観を描いてきた湯川潮音さん。初のカヴァー集となる『Sweet Children O’ Mine』にはオアシス、レディオヘッド、ガンズ・アンド・ローゼズ、プリテンダーズなど、意外なアーティストの曲が並ぶ。
「ひとつ前のアルバムでメリー・ホプキンのカヴァーをやったとき、客観的に歌い手としての自分を見ることができました。自信もついたのでカヴァー・アルバムをつくることにしたんです。せっかくやるなら自分のイメージから離れたものをカヴァーしたいなと思って、あえて自分のルーツにない音楽を選びました」
プロデュースは前作同様、ロンドン在住のベース奏者、KUMA原田が手がけている。アコースティック・ギター、マンドリン、ウッド・ベース、アコーディオンなどが活躍する音はナチュラルで、透明感のあるヴォーカルと心地よく響き合う。原曲にとらわれないアレンジも面白く、3拍子にしたジャクソン5の「I Want You Back」など、もともとトラッドの曲であったかのようだ。
「ギターと歌でデモを録るとき、3拍子の曲だと思い込んでいたんです(笑)」
レコーディングは昨年9月、ロンドン郊外のスタジオでオランダやポーランドな
ど、さまざまな国のミュージシャンと合宿しながら行われた。シークレット・トラッ
クとして収められているのは60年代のフォーク・ロックの名曲。ギターの弾き語り
で、鳥の声も聞こえる。
「エアロスミスの“Angel”の歌入れをするとき、キーが難しくて、煮詰まりまし
た。天気がよかったので機材を外に出してもらい、気分転換にボブ・ディランやジョニ・ミッチェルを歌っていたら、“なんで入れないの?”とみんなが言うので、
“じゃあ、バーズの曲をシークレット・トラックに”となったんです」
贈り物にしたい1曲として選んだのはブルース・コバーンの「You Point To The
Sky」だ。
「昨日、雪が降ったので、雪の降らないところに住んでいる人に贈ります。この曲の入っている『雪の世界』というアルバムが昔からすごい好きなんです。カナダの彼が住んでいる場所には行ったことがないんだけれども、そこに旅をしたような気分になります」
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