今夏もノース・シー・ジャズ祭に招かれるなど、これまでに約30ヶ国、120都市でプレイ。世界を舞台に活躍する沖野修也さんがDJ20周年を迎えた。
「ジャズやブラジル音楽など、ダンス・ミュージックとされていなかった音楽で踊ることが認められた20年だったと思います。僕は新しい音楽と古い音楽、たとえばテクノとジャズをミックスしたりするのですが、そういう音楽の楽しみ方をするリスナーも増えてきました」
創造性のある選曲は音楽の持つ力を最大限に引きだす。優れたDJはそのことを証明してきた。
「DJの選曲にあってシャッフル機能にないのは関連性です。この先、技術が進むと、その点はコンピュータにも可能かもしれません。でも、目の前にいる人の反応を見て変化していく、お客さんとのコミュニケーションは人間だからできることでしょう。だから僕はいつまでも現場を大切にしていきたい」
5年ほど前、パリでDJをしたときのことは強く印象に残っている。
「その日はアラブ系の人が多かったんです。たまたま日本を出る前に買ったレコードがアラビア音楽をサンプリングしたブレイクビーツで、それをかけた瞬間にアラブの人ばかりでなく、みんなが驚いていた。沖野修也といえばジャズとか、ジャズのDJは生音とか、そういうすべての常識を打ち破るような強烈なインパクトを与えられたときに、ふだん感じられないような感動があるんです」
9月11日には、発起人として2003年から続けているTokyo Crossover/Jazz Festivalに20周年を記念した一夜限りの特別バンドで出演する。
「菊地成孔さんとバンドで共演するのは初めてなんです。しかもそこにMonday満ちるが絡み、20年間に僕が関わった曲を新たなアレンジでお聴かせします」
贈り物にしたい音楽はスティーヴィー・ワンダーの「Another Star」だ。
「いまもクラブでDJ達がかけ続ける一大アンセムを音楽業界の人々へ贈ります。業界が危機的状況にあるのは判らなくもないけど、そういう時にこそ“温故知新”するべきでは? 知恵も愛情もなく、汗も流さなくなってしまった業界人に、 僕の想いが伝わるか疑問ですが……」 |