クラシックとポップの垣根にとらわれない自由な作風と鮮やかに息の合う演奏によって人気を集めるピアノ連弾デュオ、レ・フレール。メジャーからの2作目『ピアノ・ピトレスク』は兄の斎藤守也さんによる躍動的な「RGR」を収める一方、弟の圭土さんが穏やかな「桜」を書き下ろすなど、メロディアスな守也さん、ブギ・ウギ・ピアノの圭土さんというシンプルな図式だった前作から変化している。
「何年も前に書いた曲がいくつかあった前作『ピアノ・ブレイカー』は下積み時代の集大成みたいなアルバムですね。今回はタイムリーないまの自分たちの心境を音楽にしています」
圭土さんの発言を受けて、守也さんも言う。
「ロックやスペイン音楽など、昔から好きだった音楽を素直に出してみました」
椅子から立ち上がって弦を押さえながら弾くミュート奏法の「ピアノ・ハート」に始まり、メロディの美しい曲やブルース、ブギ・ウギなどが並ぶ内容は多彩。また、全5章の「完璧なお城 変奏曲」から「エンドロール」に至る終盤はストーリー性が豊かだ。アルバムとしての完成度が高まったのは、ツアーを重ねて得たものも大きいとレ・フレールは考えている。
「舞台監督、照明、音響、調律。それぞれのスタッフからプロの心を学びました。デビューから2年の経験は生かされていると思います」(守也さん)
レコーディングには2008年の春先に購入し、“Dhanie”と名づけた97鍵のベーゼンドルファーのインペリアルを使っている(一般的なピアノは88鍵)。
「ダイナミックさから繊細さまで表現できる楽器です」(圭土さん)
贈り物にしたい1曲として二人の意見がすぐに一致したのはベートーベンの「ピアノ協奏曲 第1番」だ。守也さんが言う。
「僕たちがルクセンブルクでピアノを習っていた頃の師匠、ガーリー・ミューラー先生が、この曲のピアノの最初のフレーズは“人生の歓びを表現しているんだ”と言っていました。その言葉に共感しているので、生きる歓びを感じている人に贈ります」 |