2002年の第1作『STONED TOWN』がインディーズからのリリースにもかかわらず10万枚のセールスを記録するなど、これまでも音楽ファンが注目する存在だったAkeboshiさんだが、この夏はより多くの人がその音楽の素晴らしさに気づくことになる。2年前に発表されていた「Peruna」が話題の映画『ぐるりのこと。』の主題歌になったのだ。
「映画製作会社で働いている友人から、 “橋口(亮輔)監督が1曲気に入ってるみたいよ”って話を聞いたのが始まりです。監督は“歌詞とか声がいい”と言ってくれたんですけど、映画を観ると明らかに歌詞がぴったりとはまっていました」
最新作『Roundabout』は「Peruna」など代表曲を集めたアルバム。歌詞を井上陽水と共作した「Yellow Moon」はスピード感と高揚感に満ちた音に乗せて“思いつく言葉できみへの思いをいますぐ伝えたい”と歌うポジティブな傑作だ。
「歌詞にはメッセージが入っていたほうが絶対いいと思っています。自分から出た言葉はでたらめなようでも自分の世界でしかない。知らない言葉は出ないし、自分の脳に残った言葉ですから」
3歳からクラシック・ピアノを習い、高校を卒業するまでにハード・ロック、オールディーズ、パンクなどのバンドを組んだAkeboshiさんはリバプールの音楽大学LIPAに留学した。多くの自作曲から影響が感じられるアイリッシュ・トラッドとはこのときに出会っている。
「ジャズのコードを書き取ったり、シンプルなものを複雑にしたりする授業を受けていたとき、アイリッシュパブですごい楽しそうに音楽をやっているのを聴いて衝撃を受けました。キーがDな曲が多く、そのうえコード進行もシンプルで。そういう音楽にこころで反応できたのが大きかったと思います」
贈り物にしたい1曲はニーナ・シモンの「Love Me Or Leave Me」を選んだ。
「スウィングしているバンドの上に奏でられるバッハのようなピアノ・ソロが圧巻。黒人だったという理由で夢だったクラシック・ピアニストになれなかったニーナだけに、このソロにはパンクの精神さえ感じます。“Plan B”へ歩きだした人に贈ります。結果的にこっちの道で良かったんだと思わされる曲です」 |