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text:Akira Asaba photo:Satoru Seki |
第44回
音楽のよきパートナーに
ジョン・マクラフリンを
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1994年、宮野弘紀さんはレイラ・ピニェイロのアルバムを通してルーラ・ガルヴォンさんを知り、「白髪の仙人が弾いているようなイメージ」の簡素かつ深みのある演奏に感銘を受けた。以来、アコースティック・ギターのデュオによる共演を熱望し、ついに実現したのがリオ・デ・ジャネイロ録音の『アダージョ 世界はゆっくりと開けてゆく』だ。収録曲はすべ て宮野さんのオリジナル。“花鳥風月”を題材にした曲が多く、わびさびとサウダージが溶け合うような素晴らしい作品になっている。
「昔、北斎や広重の作品にヨーロッパの芸術家が感動して、日本に刺激された絵を描いたじゃないですか。それと同じように、僕の日本的な曲をどう広げてくれるかなというのに興味があったんです」
大きな成果を確信したのは「さくら」のイントロをルーラさんに任せたときだ。
「次の日にスタジオで聴くと、想像もつかないハーモニーを使って、僕がこの曲で表現したいことを引き出してくれていた。あのイントロが付くだけで、桜がふわっと風に揺れる感じがするんですね」
ルーラさんも振り返る。
「とても自然にできました。宮野の曲はメロディがきれいで、気持ちが伝わる。宮野はギターも作曲も個性的で、誰も真似のできないオリジナリティを感じました」
完全な調和を見せる演奏は初共演というのが不思議に思えるほど。タイトル曲は極めてゆったりとしたテンポの中で、多彩な奏法を駆使する2台のギターが響きあい、空間的な広がりを感じさせる。
「オーケストラが見えるような演奏をしたいと伝えると、ルーラは独特のヴォイシングで僕のメロディを広げてくれました」
音楽に対する見方や感じ方が共通する二人だったのだろう。ルーラさんが言う。
「僕は日本語がわからないし、宮野もポルトガル語を話さない。でも、何も話さなくても心は通いあいました」
贈り物にしたい1曲として宮野さんが選んだのはジョン・マクラフリンの「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」だ。
「トンネルの中を進むようなアドリブがサビのところに来たとき、ぶわああああっと広がるんですよ。その瞬間がエクスタシーでね。ルーラにプレゼントします。この曲が入っているアルバム『マイ・ゴールズ・ビヨンド』は僕の原点なので、自分をよく知ってもらえると思いますから」 |
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すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。デュオ作品をリリースした宮野弘紀さんとルーラ・ガルヴォンさんが贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。 |
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JOHN McLAUGHLIN
『MY GOAL’S BEYOND』
MILES DAVISとの共演で世界的に名を高めた技巧派ギタリストの71年発表作。 |
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Hiroki Miyano
1953年、東京生まれ。81年、『マンハッタン・スカイライン』でデビュー。ギタリスト、作編曲家として活躍。
Lula Galvao
1962年、ブラジル生まれ。カエターノ・ヴェローゾやイヴァン・リンスといった一流アーティストをサポート。
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宮野弘紀/ルーラ・ガルヴォン
『ADAGIO 世界はゆっくりと開けてゆく』 |
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