日本人の父とスウェーデン人の母との間に東京で生まれ、小中学校時代はロンドンで生活。現在はオックスフォード大学の大学院に在籍しながら、東京を拠点にプロのミュージシャンとして活動する。LEO今井さんの『FIX NEON』はそんな来歴がさまざまな面に反映しているアルバムだ。
多くの曲から感じるのはスピード感。単にテンポが速いというのではなく、音の密度の高さがそれを強調する。
「疾走感のある都会が歌詞の舞台になっていて、それに伴うアレンジが多いですかね」
収録曲はすべてオリジナル。硬質な感触とキャッチーさが均衡を保つところに特徴がある。
「楽曲的には自分のルーツになるものから引用しようと思いました。青春時代に聴いた音楽がいちばん根強いじゃないですか。僕の場合だとパール・ジャムなどアメリカのロック・バンドとエイフェックス・ツインやスクエアプッシャーといった人間味のあるイギリスのテクノです。それを何らかの形で融合させたかった。歌詞に関しては、社会の仕組みが複雑になるとともに人間関係がどんどん冷めていって、表面的にはきれいな現代社会も実は中が腐っているんだろうと思いがちじゃないですか。でも、そういうものを乗り越えて、嘘のない関係性、確かな友情や愛情を求める大切さを最終的には歌っています」
千代田線の緑、南北線の水色など、地下鉄路線の色をモチーフに東京の混沌を感覚的に表現した「Metro」をはじめ、独特の言語感覚による歌詞も興味深い。
「大学院では、僕みたいな人に向く学問はなんだろうと考え、比較文学を学んでいます。日本の文学を勉強し、文献を読むことで言い回しとか表現の手法を知り、それがリファレンスになっているんです」
ポップな曲調の「Tokyo Lights 2(東京電燈・其ノ二)」には“なにとぞ、なにとぞ、答えてくれよ”というフレーズが登場し、印象に残る。
「pleaseを直訳しているだけなんですけどね(笑)」
贈り物にしたい1曲として選んだのはニール・ヤングの「Harvest Moon」だ。
「残念ながら独身なんですけど、結婚して、その生活が20年続いたら、結婚記念日に最愛の妻にプレゼントしたいと思います。僕の解釈では、“恋愛を一日にたとえるといまは夕暮れどきだけど、僕はあなたをいまだに愛しています”というメッセージなんです。“もう一回、あなたの踊るところを見てみたい”という歌詞なんですね」 |