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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

 第40回
 心が明るくなる サッチモの「バラ色の人生」

 一瞬にして、ここではない遠いどこかへ連れていってくれる音楽がある。中山うりさんの「月とラクダの夢を見た」はその典型。郷愁を誘うメロディ、やわらかく温かい声、感傷的なアコーディオンの音色がひとつになるとき、聴き手は魔法にかかる。
  幼稚園のころからエレクトーンを習い、高校の吹奏楽部ではトランペットに打ち込んだうりさんは二十歳を過ぎたころ、アコーディオンと出会った。
「ちょっとだけ興味をもってお店で触らせてもらうと、全然弾けなかったんですけど、ピンときました。左手で伴奏しながら右手でメロディが弾けて、歌えるのがいいし、見た目もなんかかわいいなと思って」
  すでに曲づくりを始めていたうりさんはアコーディオンの弾き語りという個性的なスタイルを築いていく。ライヴは評判を呼ぶようになり、06年にはCDデビュー前にもかかわらずフジロックに出演。同年、PC音楽配信で「月とラクダの夢を見た」が週間ダウンロード数46,900件を記録する。興味深いのは音楽活動が忙しくなった現在も、並行して美容師の仕事を続けているところだ。
「曲をつくるようになったころは、音楽やってないと美容師続けられないなという精神状態だったんですが、いまはお客さんとの人間関係ができて美容師の仕事が好きになりました。できる限り、続けていきたいですね」
  1stアルバム『DoReMiFa』に収められている「早起きラジオ」や「走る女」の歌詞は実体験がもとになっている。
「女性の方に“絵が浮かぶ”とか“朝聴いてます”とよく言われます。働きながらライヴとかやっていて、とにかく忙しかったんで出てきちゃった歌詞かもしれないです」
  自分の生き方や表現と自然体で向き合うからこそ、うりさんの音楽は心に響くのだろう。 「これからはアコーディオン以外でも何か面白い楽器があれば使ってみたいと思っています。自分で自分の音楽に飽きたらいやですね」
  贈り物にしたい1曲として選んでくれたのは、サッチモことルイ・アームストロングの「バラ色の人生」だ。
「すべての人に贈りたいですね。彼が演奏している曲は全部、聴くと元気が出ます。昨日このお題について考えていてサッチモの曲を聴いていたら、心が明るくなりました」

text by Akira Asaba
photo by Hideo Matsumura


すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
注目のシンガー・ソングライター、中山うりさんが
贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。


Louis Armstrong
『ハロー・サッチモ! 〜ミレニアム・ベスト』
「この素晴らしき世界」や「バラ色の人生」などを収録したベスト盤。

Uri Nakayama

アコーディオン弾き語りのシンガー・ソングライター。01年からライヴ活動を始め、06年、FUJI ROCK FESTIVAL、07年、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVALと大規模ロックフェスにも出演。07年5月、1stアルバム『DoReMiFa』をリリース。

『DoReMiFa』

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