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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

 第39回
 戦争に巻き込まれている人に マイ・フェイヴァリット・シングスを

 オルケスタ・デ・ラ・ルスで世界を舞台に活躍したパーカッション奏者のカルロス菅野さんは95年、日本のトップ・ミュージシャンを集めて熱帯JAZZ楽団を結成。ダンサブルで娯楽性あふれるラテン・ジャズを追求している。11作目のアルバム『熱帯JAZZ楽団 XI〜Let's Groove〜』は収録曲の約半数が洋楽のカヴァー。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「ヒップ・トゥ・ビー・スクエア」、アース・ウインド&ファイアーの「レッツ・グルーヴ」といったヒット曲が総勢17名のカラフルなサウンドによって新たな魅力を放つ。
「ラテンをやってますけど、僕はロックとかファンクとか、なんでも好きなんですよ。聴きなじみの曲をアレンジして、皆さんにラテンやジャズの世界に親しんでもらおうと思ったところから熱帯JAZZ楽団はスタートしました」
 スタイリスティックスの「愛がすべて」はイントロのトランペットがフレーズも音色もオリジナルと同じ。カヴァー曲のイントロはほとんどオリジナルに忠実で、瞬時に何の曲かがわかる。
「ここを聴けばわかるっていうところは大事にしたほうが、逆に熱帯なりの味つけの仕方が際立ってくると思うんですよね」
 カルロスさんが歌うスタンダードの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、曲の途中でリズムがラテンから4ビートにガラリと変わる。その鮮やかさはヴァーサタイルなミュージシャンを揃える熱帯JAZZ楽団の真骨頂だ。
「民族的にカテゴライズされているところがあるニューヨークでは、サルサ・バンドが4ビートに行くことはほとんどありません。日本で音楽をやるメリットはラテンもフュージョンもジャズもふつうにプレイできて、経験を積めるというところにあるんです。デ・ラ・ルスで国連平和賞を受賞したとき、“東洋的なものと西洋的なものが同じところに溶け込んで成り立つことはないと欧米人は考えていたけれど、ここにそうではないことを証明する人たちがいます”と紹介されました。向こうの社会ではマイノリティたちの音楽を尊敬して、それが高いレベルまでいけたということで現象を引き起こせたと思うんですよね」
 贈り物にしたい1曲としては、「マイ・フェイヴァリット・シングス」を選んだ。
「ロマンティックな曲というイメージが強いと思います。でも、 “泣きたいときも好きなことを思い浮かべたら楽しくなれる”とこの曲が歌われる『サウンド・オブ・ミュージック』は、ナチスから逃れた一家が故郷を離れる物語でもあるんですね。いまも戦争が起きていますが、そういうところにいるすべての恵まれない人に贈りたいです」

text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi


すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
熱帯JAZZ楽団を率いるカルロス菅野さんが
贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。


『THE SOUND OF MUSIC ORIGINAL SOUNDTRACK』
「My Favorite Things」など名曲を多数収録した64年録音作品。

Carlos Kanno

84年、オルケスタ・デ・ラ・ルスに結成メンバーとして参加。90年から95年に 脱退するまでリーダー。90年に1stアルバムが全米ラテン・チャートで11週連続 1位を獲得するなど旋風を巻き起こす。95年、熱帯JAZZ楽団を結成。

『熱帯JAZZ楽団 XI〜Let's Groove〜』

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