音楽好きの両親のもと、0歳からピアノで遊び、中学の吹奏楽部ではフルートを担当した小林香織さんは高校2年のとき、サックスを始めた。
「いろんな楽器をやったうえで、アルト・サックスを吹いたときは迷いがありませんでした。一生の友人になるであろう親友を見つけたような気持ちです。毎日8時間ぐらい練習しましたね」
音大在学中からジャズ・スポットで演奏し、23歳のとき、アルバム『Solar』でデビュー。エモーショナルなブロウとポジティヴな音楽性によって注目の存在となった。3作目となる最新アルバム『Glow』では全10曲中8曲を自作し、コンポーザーとしての才能もアピールしている。
「カヴァーもやりがいのあることではあるんですけれども、楽曲を世界のどこにもない、まっさらな状態から自分ですべてつくっていきたいという気持ちがあって。前2作に比べたら、はるかに私の言いたいことが自分の話し口調のまま言えたかな、という感じになりました」
演奏するとき、つねに意識しているのは、聴く人に元気とパワーを与え、幸せを感じてもらうこと。強力にグルーヴする高揚感いっぱいのサウンドにのせて、サックスがキャッチーなメロディを奏でる「PASSING LANE」は象徴的だ。
「曲を書くときはメロディとリズムとハーモニーが切っても切れない感じでいっしょに出てきます。イントロ(無伴奏のサックス・ソロ)は叫んでいるような感じを出しました。何の音を吹いたか譜面に起こせないようなフレーズですし、あそこは音楽というよりも演技のひとつですね」
塩谷哲が「MONOCHROME」でスリリングなソロを披露し、同じくピアニストの国府弘子が「HOW DEEP IS YOUR LOVE」でデュオのパートナーを務めるなど、 新作には“自分の音”をもつゲストが参加。「TOYユS JAM」ではCharと熱いコール・アンド・レスポンスを繰り広げる。
「Charさんは子どものころから憧れていたので、自分のリーダー作に参加していただけたのが夢のようです。レコーディングではブースは別なんですけど、ガラス越しに弾いている姿が見えて、お互い顔を見ながら演奏できたのですごくテンションが上がりました。ソロは最初の新鮮な気持ちのときがいちばんよくて、一発勝負のつもりでやります。ライヴの延長で録るというコンセプトは大事にしたいですね」
贈り物にしたい1曲として選んだのは、BASIAの「Third Time Lucky」だ。
「この春、新しいことを始める人や、始めようかなと思っている人に大好きな曲を贈ります。いままでやってきたことを続ける人も、この曲を聴くとピュアな新しい気持ちになれるはずです」
text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi
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