第37回 若くセンシティヴな後輩に コルトレーンのバラードを
スティーリー・ダンやジョニ・ミッチェルの名盤で腕をふるったスタジオ・ミュージシャン。『アローン・バット・ネヴァー・アローン』をはじめとするヒット・アルバムをもつソロ・アーティスト。スムース・ジャズの最高峰バンド、フォープレイのメンバー。40年近いキャリアのなかで立ち位置が変わることはあっても、ラリー・カールトンさんはつねにトップ・ギタリストとして尊敬と信頼を集めている。 最新アルバム『ライヴ!/ラリー・カールトン・ウィズ・ロベン・フォード』は昨年9月、ブルーノート東京でレコーディングされた。ともに卓越した技術と歌心をもつふたりのギタリストがリラックスした雰囲気のなか、ときに楽器で語り合い、ときに鋭い技を応酬する。 「ロベンと初めて会った70年代の半ば、わたしはスタジオ・ミュージシャンとしての地位を確立していましたが、3歳年下の彼から強い影響を受けました。彼はジャズのフレーズを弾きますが、音がブルースなのです。彼のようにビ・バップを自然に弾けるブルース奏者をほかに知りません」 ブルージーなテーマが印象的なロベンのオリジナル「ザット・ロード」、ラリーさんが70年代に書いた人気曲「リオ・サンバ」など、それぞれが持ち寄った曲のなかで、ふたりは相性のよさを発揮し、また個性も際立たせていく。ロベンの代表曲で、彼のヴォーカルも聴きどころのブルース「トーク・トゥ・ユア・ドーター」はラリーさんが提案して演奏することになった。 「ロベンといえばこの曲ですから。思ったとおり観客には大受けでしたし、気持ちよく演奏できました」 ここ数年、フォープレイでの活動と並行するラリーさんのソロ活動はレコーディングもライヴもブルースを基本としている。トップ・ギタリストにとって、ブルースの魅力とはどこにあるのだろうか。 「ものすごくたくさんの感情を、たったひとつの音に込めて弾く面白さです。それを可能にする条件が整っているのが、ブルースという音楽なのです」 贈り物にしたい1曲としては、ジョン・コルトレーンの「トゥー・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ」を選んだ。 「すべての若いセンシティヴなミュージシャンに。いまでもこの曲を聴くと特別な気持ちがわき上がります。同じ気持ちになってもらえるのではないでしょうか」
text by Akira Asaba photo by Atsuko Takagi
JOHN COLTRANE QUARTET 『BALLADS』 激しい演奏で名高いサックス奏者が61年、62年に録音したバラード集。
Larry Carlton
1948年、カリフォルニアに生まれる。6歳でギターを始め、68年、初ソロ作を録音。クルセイダーズに加入した70年代初めから第一線で活躍。98年、フォープレイに加入。
『LARRY CARLTON WITH SPECIAL GUEST ROBBEN FORD /LIVE IN TOKYO』