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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

 第36回
 ポール・マッカートニーに ショーン・レノンの傑作を

 アン・サリーや畠山美由紀といった魅力的な女性アーティストがビートルズ・ソングをララバイとして歌う『Apple of her eye りんごの子守唄』から1年、男性ヴォーカリストによる『Apple of his eye りんごの子守唄』がリリースされた。“赤盤”と“青盤”がペアとなるところも“ビートルズな”カヴァー集をプロデュースしたのは、中学時代にビートルズを聴き込んだことで音楽の道へと進んだ鈴木惣一朗さんだ。
「1枚目のジャケットが女の子で赤と決まったときに、パッとひらめいたんですよ。うまくいったら“青盤”もつくれるかなって。交流のある男性アーティストのリストが頭に浮かび、永積タカシくん(ハナレグミ)からスタートして、細野(晴臣)さんの“Goodnight”で終われればいいなと思いました」
 アーティストには直接、電話をかけて参加を依頼し、最もふさわしいと思える曲を選んでいった。ハナレグミの「Blackbird」はやさしく包み込むようなヴォーカルが曲にぴったりで、穏やかな空気感を醸しだす。
「2年前、永積くんのアルバム『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』の合宿レコーディングをしたとき、彼の中にあるポール的な素養を見たんです。フィンガリングであるとかヴォイシングであるとか。彼の曲にはポールが自宅録音した最初のソロ『McCartney』に似たような質感がありました」
 サイゲンジは「If I Fell」を歌っている。
「彼はこの曲を知らなかったので、事務所までCDを持っていって、いっしょに聴きました。そしたら“いい曲ですね”って。ミュージシャンは直感的だし正直なのでわかるんですよ。サイゲンジが笑顔を見せたので、このレコーディングはうまくいくと確信しました」
 チェレスタやマンドリンを含むアコースティックな楽器を中心としたサウンドは有機的。ソファを置き、リビングのようにしたスタジオでレコーディングされた曲も多い。
「一般的にはそれぞれのプレイヤーがブースに入ってレコーディングしますが、生きた音のコミュニケーションを大切にしたかったんです。人に寄り添い、語りかけるような音楽を目指しました」
 贈り物にしたい1曲として選んだのはショーン・レノンの「Dead Meat」だ。
「ポール・マッカートニーは『FRIENDLY FIRE』を聴いたでしょうか。もし聴いたら本当に驚くと思うんですよ。二世タレントがつくったアルバムではないんです。とくに“Dead Meat”はいい。ショーン・レノンはお父さんのことを意識しすぎて、これまでは真逆の音楽をつくってきた。でも、受け入れたんですね。だからジョン・レノンみたいなの。それにポール・マッカートニーっぽいところもある。ショーン・レノンはジョンとポール、二人の架け橋だと思います」

text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi


すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
ビートルズ曲集『りんごの子守唄』を制作した鈴木惣一朗さんが
贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。


SEAN LENNON
『FRIENDLY FIRE』
セルフ・プロデュースによる8年ぶりのソロ2作目。06年作品。

Sohichiro Suzuki

1959年、静岡県に生まれる。83年、World Standardを結成し、85年、細野晴臣プロデュースでデビュー。以降、Everything Play、RAMなどで活動。プロデューサーとしては畠山美由紀、ハナレグミ、イノトモほかを手がける。

『Apple of her eye りんごの子守唄』

『Apple of his eye りんごの子守唄』

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