アン・サリーや畠山美由紀といった魅力的な女性アーティストがビートルズ・ソングをララバイとして歌う『Apple of her eye りんごの子守唄』から1年、男性ヴォーカリストによる『Apple of his eye りんごの子守唄』がリリースされた。“赤盤”と“青盤”がペアとなるところも“ビートルズな”カヴァー集をプロデュースしたのは、中学時代にビートルズを聴き込んだことで音楽の道へと進んだ鈴木惣一朗さんだ。
「1枚目のジャケットが女の子で赤と決まったときに、パッとひらめいたんですよ。うまくいったら“青盤”もつくれるかなって。交流のある男性アーティストのリストが頭に浮かび、永積タカシくん(ハナレグミ)からスタートして、細野(晴臣)さんの“Goodnight”で終われればいいなと思いました」
アーティストには直接、電話をかけて参加を依頼し、最もふさわしいと思える曲を選んでいった。ハナレグミの「Blackbird」はやさしく包み込むようなヴォーカルが曲にぴったりで、穏やかな空気感を醸しだす。
「2年前、永積くんのアルバム『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』の合宿レコーディングをしたとき、彼の中にあるポール的な素養を見たんです。フィンガリングであるとかヴォイシングであるとか。彼の曲にはポールが自宅録音した最初のソロ『McCartney』に似たような質感がありました」
サイゲンジは「If I Fell」を歌っている。
「彼はこの曲を知らなかったので、事務所までCDを持っていって、いっしょに聴きました。そしたら“いい曲ですね”って。ミュージシャンは直感的だし正直なのでわかるんですよ。サイゲンジが笑顔を見せたので、このレコーディングはうまくいくと確信しました」
チェレスタやマンドリンを含むアコースティックな楽器を中心としたサウンドは有機的。ソファを置き、リビングのようにしたスタジオでレコーディングされた曲も多い。
「一般的にはそれぞれのプレイヤーがブースに入ってレコーディングしますが、生きた音のコミュニケーションを大切にしたかったんです。人に寄り添い、語りかけるような音楽を目指しました」
贈り物にしたい1曲として選んだのはショーン・レノンの「Dead Meat」だ。
「ポール・マッカートニーは『FRIENDLY FIRE』を聴いたでしょうか。もし聴いたら本当に驚くと思うんですよ。二世タレントがつくったアルバムではないんです。とくに“Dead Meat”はいい。ショーン・レノンはお父さんのことを意識しすぎて、これまでは真逆の音楽をつくってきた。でも、受け入れたんですね。だからジョン・レノンみたいなの。それにポール・マッカートニーっぽいところもある。ショーン・レノンはジョンとポール、二人の架け橋だと思います」