ソロ、デュオ、トリオによる演奏を収めた小沼ようすけさんの新作『3,2&1』は全編に穏やかでオーガニックな雰囲気がただよう。テーマはパーソナル感だ。
「ジャズを始めたころ、まわりにドラマーやベーシストがいなくて、ひとりでスタンダードとかを弾いていたんです。そういうルーツとしてのソロ・ギターを中心にバリエーションのあるアルバムをつくりたいなと。本来、自分のもっているものを純粋に出そうという意味でテーマをパーソナル感にしました」
ソロで奏でられる「Cherish The Love」は、アコースティック・ギターのあたたかい響きに合う美しいメロディが印象に残る。
「コード進行だけ決めておいてスタジオに入りました。メロディってギターを弾いていると生まれてくるじゃないですか。曲として生まれた瞬間の、原石の状態をアルバムに残したいなと思ったんです」
チック・コリアの名曲「Spain」は多重録音による、ひとり三重奏だ。
「最初にアコギを入れて、それを聴きながらエレキを2回弾いたんです。自分とセッションするわけなんですけど、そうすることでリズムの感じとか音色とかアタックとか、自分が客観的にわかりました。クセって不思議ですよね。あれ? なんでここでタメたのがぴったり合ってんだろうって(笑)」
デュオやトリオに招いたのは気ごころの知れたミュージシャンばかり。映像的で浮遊感のあるオリジナル曲「Gleam」は共演者をイメージして書かれている。
「鈴木正人くんていうベーシストはエレベを弾くとファンキーなんですけど、ウッベを弾くと現代音楽っぽい新しい感じになります。仙道さおりさんは潔いっていうか、弾かないところはまったく弾かない。空間的な美を意識している人です。トライアングルをポーンと鳴らして美を表現できるパーカッショニストはなかなかいません」
贈り物にしたい1曲は、リッキー・リー・ジョーンズの「My One And Only Love」。
「いちばん好きなアルバムが『POP POP』なんですよ。全部好きですけど、スタンダードの1曲目を。煮詰まったときとか物事がうまくいってないとき、いつも聴くんですよね。世の中っていやなこと、たくさんあるじゃないですか。そういうときにスッと抜いてくれるというか、シンプルにしてくれます。悩んでいたり、何かがうまくいかないときに聴いてもらいたいですね」
text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi
|