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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

 第32回
 リッキー・リーを聴くと 悩みがスッと抜けていく

 ソロ、デュオ、トリオによる演奏を収めた小沼ようすけさんの新作『3,2&1』は全編に穏やかでオーガニックな雰囲気がただよう。テーマはパーソナル感だ。
「ジャズを始めたころ、まわりにドラマーやベーシストがいなくて、ひとりでスタンダードとかを弾いていたんです。そういうルーツとしてのソロ・ギターを中心にバリエーションのあるアルバムをつくりたいなと。本来、自分のもっているものを純粋に出そうという意味でテーマをパーソナル感にしました」
  ソロで奏でられる「Cherish The Love」は、アコースティック・ギターのあたたかい響きに合う美しいメロディが印象に残る。
「コード進行だけ決めておいてスタジオに入りました。メロディってギターを弾いていると生まれてくるじゃないですか。曲として生まれた瞬間の、原石の状態をアルバムに残したいなと思ったんです」
  チック・コリアの名曲「Spain」は多重録音による、ひとり三重奏だ。
「最初にアコギを入れて、それを聴きながらエレキを2回弾いたんです。自分とセッションするわけなんですけど、そうすることでリズムの感じとか音色とかアタックとか、自分が客観的にわかりました。クセって不思議ですよね。あれ? なんでここでタメたのがぴったり合ってんだろうって(笑)」
  デュオやトリオに招いたのは気ごころの知れたミュージシャンばかり。映像的で浮遊感のあるオリジナル曲「Gleam」は共演者をイメージして書かれている。
「鈴木正人くんていうベーシストはエレベを弾くとファンキーなんですけど、ウッベを弾くと現代音楽っぽい新しい感じになります。仙道さおりさんは潔いっていうか、弾かないところはまったく弾かない。空間的な美を意識している人です。トライアングルをポーンと鳴らして美を表現できるパーカッショニストはなかなかいません」
  贈り物にしたい1曲は、リッキー・リー・ジョーンズの「My One And Only Love」。
「いちばん好きなアルバムが『POP POP』なんですよ。全部好きですけど、スタンダードの1曲目を。煮詰まったときとか物事がうまくいってないとき、いつも聴くんですよね。世の中っていやなこと、たくさんあるじゃないですか。そういうときにスッと抜いてくれるというか、シンプルにしてくれます。悩んでいたり、何かがうまくいかないときに聴いてもらいたいですね」

text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi


すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
シンプルな編成による新作をリリースした小沼ようすけさんが
贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました


RICKIE LEE JONES
『POP POP』
スタンダードやJIMI HENDRIXの作品を歌った91年作。

Yosuke Onuma

1974年11月24日、秋田県に生まれる。01年、『nu jazz』でデビュー。以降、ソロ活動に加えて、CHEMISTRY、RHYMESTER、今井美樹、アン・サリー、畠山美由紀ほかとのコラボレーションで活躍。06年4月19日、5thアルバム『3,2&1』をリリース。

『3,2&1』
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