デビューから7年目にしてbirdさんが初のベスト・アルバム『bird's nest』をリリースした。チャレンジを繰り返してきたbirdさんらしく、R&B、ハウス、ロックから沖縄音楽まで、実に多彩な内容だが、どの曲にも共通するのがポジティブな力強さだ。
「歌うこと自体が好きで楽しいなっていうのがありますね。ただ、楽しい曲とか前向きな曲が、前向きやからできたっていうわけでは決してなくて、出発点はそうじゃなかったりする。その裏返しですごく前向きな曲ができるというのがあって、詰まったり止まったりすることがあるからこそ、何かを作ることに向かえるのかなっていう気がします」
デビュー曲の「SOULS」をはじめとして、初期の作品の歌詞に“太陽”や“陽射し”といった単語が印象的に使われているのも同じような理由による。
「狭い部屋で、ずっと開放的なものを求めていたんで(笑)。このごろは旅行が好きになって、行った場所からイメージできるものを作ったりとかっていうふうに、ちょっと作り方は変わってきているんですけど。前の『vacation』はリゾートのコンセプト・アルバムにしようと思ってたんで、タヒチの小さい島を転々としたり、イースター島に行ったりしました。いちおう休みで行くんですけど、いまは出口が音楽なので、音楽とつなげられる場所に自然に行きたくなりますね」
田島貴男がプロデュースした「髪をほどいて」は“恋は摩訶不思議なもの あなたにすぐ逢いたくなるのよ”というストレートな歌詞が、作詞の面でのbirdさんの新境地を感じさせる。
「田島さんの考えもあって、恥ずかしがったりせずにガッツリ書いてみることにしました。新しい扉があいた1曲ですね」
古謝美佐子の名曲「童神」との出会いには運命的なものを感じている。
「コンピレーションに参加しませんかというお話があって、カヴァーをなんの曲にしようかなと考えてたとき、いつもいっしょに演奏してくれてるげんたさんが古謝さんのCDをくれたんです。この曲は聴いたことがあったので選んだんですけど、そのあとで妊娠していることがわかり、しかも子守唄ということで、なんか呼ばれてるかなって。ベストの次に作ろうとしているアルバムの内容ともリンクしているし、このタイミングで歌うことの必然性を感じました」
贈り物にしたい1曲として選んだのは、リッキー・リー・ジョーンズが歌う「Smile」だ。
「説教的に言われてもひくんですが、なんかあれぐらいのサラッとした“いつも微笑みを忘れないように”っていうメッセージはいいなと思って。リッキー・リー・ジョーンズさんはあの声がすごい好きで、ほんとうに自由に歌ってはる人やなあって思います。どうしようかなと、ちょっと立ち止まっている人に聴いてほしいですね」
text by Akira Asaba
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