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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

 第18回
 大親友と飲みながら語り合ったスティーヴィー・ワンダー

 参加アルバムを列記するだけで誌面が埋まってしまうであろうトップ・ドラマー、村上“ポンタ”秀一さんが、音楽活動30周年記念作『MY PLEASURE〜FEATURING GREATEST MUSICIANS〜』をリリースした。ポンタさん自身が好きな曲を、信頼するミュージシャンとともに演奏し、親しいシンガーに歌ってもらうという企画の作品で、フィーチャーしたアーティストの顔ぶれ(ゆず、槇原敬之、角松敏生&南佳孝、吉川晃司、ゴスペラーズ、Tinaほか)を見ても、ポンタさんの交友の広さと人望の厚さがわかる。今回、ポンタさんは音楽界の後輩である各アーティストに自筆の手紙を送り、参加を依頼した。
「もちろん僕も1秒先に生まれた人には敬語でしか話のできないタイプの人間だけども、音を出すとなると対等だし、逆にリスペクトしますからね。そういう意味では、礼儀というか筋というか、そういうものを自分から出したかった」
 手紙を受け取った皆さんは恐縮したのでは?
「福山くんなんか、そう言ってましたけどね」
 その福山雅治が井上陽水作品を歌った「帰れない二人」には、今回のアルバムにおけるポンタさんのプロデュース方法がよく表われている。
「好きな曲って最初は叩きたくないんですよ。福山くんと塩谷哲(ピアノ)と坂井紅介(ウッドベース)のおのおのの感性に任せて1回やったところで、指揮者じゃないけど、味つけしていきました」
 ポンタさんが初めてLAに渡った際、キャロル・キングに連れられて行ったダニー・ハザウェイのライヴで聴いたというエピソードのある「YOU'VE GOT A FRIEND」ではkiroroがフィーチャーされている。
「最初にアルバムの曲の流れを考えました。kiroroはここ(中盤)で清涼剤がほしかったんですよ。彼女たちのたたずまいとか、音楽に対する姿勢とか見てて、なんか自然にそういう気持ちでしたね」
 さて、ポンタさんが贈り物にしたい1曲として選んだのはスティーヴィー・ワンダーの「Ribbon In The Sky」。相手は今回のアルバムで「EVERYTHING MUST CHANGE」を歌っているKeiko Leeさんだ。
「ちょっとゴマすっとかないとな(笑)。大親友です。二人ともスティーヴィーがとても好きで、この曲の話になったとき、“俺は一生、歌えない曲だ”と言ったら、“私は毎日、あんたのために歌ってあげる”って、酔っぱらって言ったんですよね。それがすごく印象的だったんですよ。名古屋の老舗のジャズクラブに行ったとき、観に来てくれて知り合いました。紹介される前に開口一番、“あんた右と左のシンバル、いい音しとるね、ちょうだい”とか言われて、何ゆうとんねん、この女、とか思った。でもヴォーカリストに、シンバルいい音しているからくれ、と言われたのが、コイツやるなあみたいな感じで、2枚あげたんです。ところがあとで電話したら、もうその夜、どっか忘れてきてるの。“あれどっか置いてきたがねえ”。それで終わりだもん(笑)」
 ちなみに「Ribbon In The Sky」はその後?
「もうたくさん歌ってもらってますよ」

text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi


 すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
 音楽活動30周年を迎えた村上“ポンタ”秀一さんが
 贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。


『STEVIE WONDER'S ORIGINAL MUSIQUARIUM T』
72年以降の代表曲と新曲4曲で構成。
稀有な才能が凝縮されている82年作品。

SHUICHI“PONTA”MURAKAMI

1951年1月1日、兵庫県西宮市に生まれる。72年、赤い鳥に参加。以降、現在にいたるまで、井上陽水、桑田佳祐、松任谷由実、矢沢永吉、渡辺貞夫ほか、数多くのアーティストのレコーディングやコンサートを支えているトップ・ドラマー。

『MY PLEASURE〜FEATURING
GREATEST MUSICIANS〜』
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