葉山のレストランを舞台にしたドラマ「ピーチな関係」(1999年放送)は、オープニングテーマをbirdが歌い、劇中では矢野顕子によるオフコースのカヴァーなどが流れる、音楽を重視したつくりが印象的だった。そのエンディングテーマとして使われていたのがelliottの「Viridian〜ビリジアン〜」だ。開放感とともに哀愁も感じさせるメロディ、涼しげな声、ジャズやブラジル音楽の要素を取り入れたアレンジなどが、毎週、心地よい余韻を残していた。
elliottとはヴォーカリスト、TOMOKOさんが自作曲を歌うときのソロ・プロジェクト名。2002年秋にリリースされた1stアルバム『空を見ていた…。』にも飾らない言葉をみずみずしいメロディに乗せた楽曲が並んでいるが、TOMOKOさんが作詞作曲をするようになったのは20代後半になってからだったという。
「高校生のころから20代前半まではいろんなバンドをかけもちで、ヴォーカルをやっていました。詞やメロディをつくるようになったのは97年ごろですね。伝えたいことやこだわっていることがあり、それを歌いたいと思ったんです」
“鉄棒にコウモリみたい ぶら下がって 逆さから空をながめる快感は”と歌われる「コウモリ」は、こどものころを思いだすノスタルジーとともに、視点を変えるだけで世界の見え方も変わるというメッセージが込められている。
「通っていた中学校の前にある公園で、3年くらい前にこのかっこうをしてみたんですよ。実際にやったことを、ただ書いたんです。生活のなかにきっかけがあって、曲を書くことが多いですね」
この曲は弦楽四重奏の穏やかな響きが、楽曲のもつ透明なイメージを強調している。
「ラッキーだったのは、落合徹也さん(ストリングスの編曲と1stヴァイオリン)と同世代なうえに、住んでいる場所が近かったこと。“代々木八幡の踏切りって知ってるよね。あそこの空気感なんだけどさ”って説明すると、“じゃあカルテットだね”って通じる感じが面白かったですね」
ミディアム・テンポの「天気雨」はリコーダーの素朴な響きが効果をあげている。
「中村きたろうさん(ベース)が突然、スタジオにこもったので何やってるんだろうなと思ったら、リコーダーを吹いていたんですよ。以前、バンドを組んでいたということもあり、バンドのみんなで意見を出しあってアルバムをつくるのが夢でした」
悩みがあって自問自答しているとき、「痛いことを言ってくれる人こそ、ほっとする」と話すTOMOKOさんが、精神的にまいっていたり、考え込んでいる人に贈りたい1曲として選んだのは、スティーヴィー・ワンダーの「Love's in Need of Love Today」だ。
「疲れているときでも、やる気十分のときでも、人を好きになったときでも、同じテンション感で語りかけてくる曲だと思います」
text by Akira Asaba
photo by Yoshiaki Nakamura
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