透明感のあるサウンドと、Lyricoさん自身が書いた“冬の終わりを告げるサクラのように”といった歌詞が、どこか日本情緒を醸しだす。アルバム『Voices of Grace』の先行シングルとしてリリースされた「キセキノハナ」は、露崎春女の名で95年にデビューして以来、R&Bシンガーのイメージが強かったLyricoさんにとって新境地となった作品だ。
「デモテープを最初に聴いたときは、どうやって捉えていいか、わからなかったんですね。クラシックの歌曲みたいだし、これポップスになるんだろうかと」
しかし、「今年(2002年)は60回くらいやりました」というフリーライブを通して、迷いは消えていった。
「リリース前から歌っていたんですけど、すごく反応がよかった。私が思うよりも、聴く側っていうのはジャンルだとかなんとかってことに捕らわれてなく、いい曲はいいものとして聴いてくれるんだな、またそういうパワーをもった曲なんだなということに気づいたんです。Lyricoになってから、私の歌はなんだろうと摸索して、もっと幅を広げていきたいともがいていたところで、この曲を歌い、自分がこうあるべきという固定観念がすごくあったんだなとわかりました。それが全部とれちゃったんですね」
そうしたことがきっかけとなり、テーマを“出逢いと別れ”にしたアルバムには、Skoop On SomebodyのKO-ICHIRO氏と共作したバラード「You're The Reason」から、小学校4年のころ、ラジオで聴いて虜になったサイモン&ガーファンクルの「スカボロー・フェア」まで、さまざまなタイプの曲が収められている。
「たぶん、いままでだったら“スカボロー・フェア”をやろうという発想は出てこなかったと思います。でも、いままでとまったく違うことをやっているわけではなくて、閉まっていた蓋がパカパカと開き、そういえばこういうことをやりたかったなというものが出てきたって感覚なんですよ」
ダンサブルでハッピーな「Holiday Kitchen xxx」には、“結局いつものPASTA!”という歌詞があるが、この一節は実体験に基づいているそうだ。
「具はそのとき食べたいものを選んで作っちゃうんですが、きのこのしょうゆ味のパスタは好きですね」
贈り物にしたい1曲として選んだのは、マイケル・ジャクソンの「MAN IN THE MIRROR」だ。
「仕事でも私生活でも、どういう方向に行くべきか迷っている人に捧げたいですね。“鏡に写っている自分から変えていく”という歌詞がすごくいいなと思って」
text by Akira Asaba
photo by Yoshiaki Nakamura
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