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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

     第11回
 成熟なんてしなくていいんだと 思わせてくれるストーンズ

 謎めいた未来都市と、そこへ向かっていく3人。TRICERATOPSの最新アルバム『DAWN WORLD』のアートワークは、骸骨やジャングルをモチーフとしてきた過去の作品と同様、和田唱さんがコンセプトを考えている。
「自分たちでつくりあげたものの顔になるわけだから、俺なりのやりたいことっていうのがいつもあるんですよね。そのときの心情と、好きなものが合体するわけです。今回は未来のことを考えることが多くて、自分が夜明けを迎えるのはいつだろうとか、“夜明け”って言葉がずっとありました。それがあったから<2020>とか<Fly Away>みたいな曲ができたんでしょうし、ああいう絵になって表われているんです」
 先行シングルとなったその2曲をはじめとして、新作には、多重録音した複数のギターやキーボードが多彩な響きで鳴っていても、3ピースバンドのタイトさを備えた曲が多い。林幸治さんが言う。
「アイディアが出てきたときに、いままでだったらライブで再現できるようにとか、いろいろ考えてたところがあると思うんですけど、今回はストレートに試してみて、よかったらそれでいいじゃんと、規制がなかったんですね。で、いろんな音が入っているんですけど、楽曲を中心に考えてるんで、不必要な音は入ってないと思います」
 ハードな印象の曲が多かった前作『KING OF THE JUNGLE』に対して、新作は60年代を連想させる曲からダンス系まで、バラエティの豊かさが際立つ。そして、もとよりポップなひねりを効かせるソングライターとして定評のあった和田さんの作風に磨きがかかっている。
「前のアルバムはステージ上の人間がステージ上の人間としてつくった曲が多い。今度のアルバムは家に帰った、そこらにいる男としての自分がつくった曲が多い。多分そこが大きな違いだと思うんですよね。デビューしてからずうっとレコーディングとライブを繰り返してて、ちょっとずつ本来のありのままの自分を家に置き去りにしてきたようなところはあるかもしれないですね。フラットな精神状態を取り戻したかったし、ただの男としてのソングライティングを、またすごくしたくなってきてたんですよね。今回はデモテープづくりから何から、じっくりやりました」
 林さんがワイルドなロックンロールの「Driver」、吉田佳史さんが浮遊感の心地よい「Old Lighter」という自作曲で、それぞれの個性を発揮している点も見逃せない。吉田さんにとって、自作曲の発表は初めてのことだ。
「どう受け取られるかはわかんなかったんですけど、ある程度、できあがった段階で二人に聴いてもらったら、いいんじゃないのと言ってくれました」
 バンドを代表して和田さんが選んだ贈り物にしたい1曲はローリング・ストーンズの「Don't Stop」だ。
「成熟なんてしなくていいんだと思わせてくれる。細かく言ったらストーンズはめちゃくちゃ成熟してるんだけど。あの年になって“ドント・ストップ”と言ってるところがカッコイイじゃないですか。そういう意味で、止まっちゃいけない人、止まりかけている人、あきらめちゃってる人に贈ります」

text by Akira Asaba
photos by Atsuko Takagi
すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
トライセラトップスさんが贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。
ローリング・ストーンズ
『FORTY LICKS』
レーベルの垣根を越えて代表曲を集めた結成40周年記念ベストで02年発表。「Don't Stop」など4曲が新録。

トライセラトップス
1996年2月、和田唱(Vo、G)、林幸治(B)、吉田佳史(Ds)によって結成される。97年5月、インディーズよりミニアルバム『TRICERATOPS』をリリースし、7月、シングル「Raspberry」でメジャーデビュー。02年10月、5作目のアルバム『DAWN WORLD』をリリース。

『DAWN WORLD』

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