謎めいた未来都市と、そこへ向かっていく3人。TRICERATOPSの最新アルバム『DAWN WORLD』のアートワークは、骸骨やジャングルをモチーフとしてきた過去の作品と同様、和田唱さんがコンセプトを考えている。
「自分たちでつくりあげたものの顔になるわけだから、俺なりのやりたいことっていうのがいつもあるんですよね。そのときの心情と、好きなものが合体するわけです。今回は未来のことを考えることが多くて、自分が夜明けを迎えるのはいつだろうとか、“夜明け”って言葉がずっとありました。それがあったから<2020>とか<Fly Away>みたいな曲ができたんでしょうし、ああいう絵になって表われているんです」
先行シングルとなったその2曲をはじめとして、新作には、多重録音した複数のギターやキーボードが多彩な響きで鳴っていても、3ピースバンドのタイトさを備えた曲が多い。林幸治さんが言う。
「アイディアが出てきたときに、いままでだったらライブで再現できるようにとか、いろいろ考えてたところがあると思うんですけど、今回はストレートに試してみて、よかったらそれでいいじゃんと、規制がなかったんですね。で、いろんな音が入っているんですけど、楽曲を中心に考えてるんで、不必要な音は入ってないと思います」
ハードな印象の曲が多かった前作『KING OF THE JUNGLE』に対して、新作は60年代を連想させる曲からダンス系まで、バラエティの豊かさが際立つ。そして、もとよりポップなひねりを効かせるソングライターとして定評のあった和田さんの作風に磨きがかかっている。
「前のアルバムはステージ上の人間がステージ上の人間としてつくった曲が多い。今度のアルバムは家に帰った、そこらにいる男としての自分がつくった曲が多い。多分そこが大きな違いだと思うんですよね。デビューしてからずうっとレコーディングとライブを繰り返してて、ちょっとずつ本来のありのままの自分を家に置き去りにしてきたようなところはあるかもしれないですね。フラットな精神状態を取り戻したかったし、ただの男としてのソングライティングを、またすごくしたくなってきてたんですよね。今回はデモテープづくりから何から、じっくりやりました」
林さんがワイルドなロックンロールの「Driver」、吉田佳史さんが浮遊感の心地よい「Old Lighter」という自作曲で、それぞれの個性を発揮している点も見逃せない。吉田さんにとって、自作曲の発表は初めてのことだ。
「どう受け取られるかはわかんなかったんですけど、ある程度、できあがった段階で二人に聴いてもらったら、いいんじゃないのと言ってくれました」
バンドを代表して和田さんが選んだ贈り物にしたい1曲はローリング・ストーンズの「Don't Stop」だ。
「成熟なんてしなくていいんだと思わせてくれる。細かく言ったらストーンズはめちゃくちゃ成熟してるんだけど。あの年になって“ドント・ストップ”と言ってるところがカッコイイじゃないですか。そういう意味で、止まっちゃいけない人、止まりかけている人、あきらめちゃってる人に贈ります」
text by Akira Asaba
photos by Atsuko Takagi
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