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生活を楽しむ家
 
 
 
生活を楽しむ家

 「1階、左側の扉」。メールで教えてもらった住所にあった建物に入り、そのとおり階段をのぼってみると、左側でなく、自分の正面にしか扉が見えない。ベルを押すと出てきた人は約束した人ではなかった。おかしいなあと首をかしげていたら、「ああ、もしかしてアーティスト?」「そうそう」「それならそこ」と背後左に隠れるようにあった小さな扉を指した。そんなやりとりの音を聞きつけて、イザベル・ロゾさんが出てきてくれた。赤いタータン・チェックのワンピースにアール・デコ時代のモガ風ショート・ボブが華奢な容姿に良く似合う。お隣さんの表現がぴったりの女性だった。

 彼女が通したくれた部屋を見てふたたび納得。ここは彼女が絵を描くために、西からの光が差し込むアトリエを探して8年前にやっと見つけた場所だ。もとはユダヤ人が経営するダイヤモンド研磨のアトリエだった。天井が高く、中庭側の窓からきれいな光がたくさん入る。ロフト風の部屋の中心に目立つ鉄の大きな柱が珍しい。パリのエッフェル塔が完成したのは19世紀末のことだが、当時は同様に鉄を使った建物が作られた。つまり、ここはその時代の建物というわけだ。足元のカラフルなタイルは、購入した時にあったその床下に、さらに何重にも重なっていた絨毯や板を1ヶ月もかかって剥がしたところ出てきたオリジナルのタイルである。

 「ここを買うのに予算をほとんど使い切ってしまって。工事をするのに毎日毎日、安い日曜大工の店を見てまわって考えたのよ」。自分の生活パターンを考えながら、部屋のデザインをした。仕切りをつけずに、キッチン、ダイニング、リビング、絵を描くアトリエ、寝室スペースを作った。考え抜いた機能的な工夫がたくさんある。大工さんに作ってもらったキッチンのカウンター・テーブルには、その下に両側から扉を開けられる棚を作った。寝室台の下にも手作りのクローゼットがある。扉を開けると洋服のかかった移動式のバーがいくつも並び、その衣類の収納量たるやものすごい。

 オリジナリティあふれる部屋の装飾も圧巻だ。彼女が大好きだという動物や昆虫、自然のモチーフ。アンティーク屋さんやのみの市をまわって見つけたものが所々に置かれ目を楽しませてくれる。天井を這うワニの剥製に、テーブルの上に飾ったオブジェは蝉の形をした灰皿。貝殻でおおわれた花瓶や小物入れの数々。まるでジャングルのなかにでも入り込んだような不思議な世界が待っている。「これらのオブジェは私の絵のインスピレーションそのもの。今の私のお気に入りはのみの市で10ユーロで買ったピンクのフラミンゴ。足は自分で作ってみたの」。そのとおり、壁には、まるで生き帰ったようなピンクのフラミンゴの絵が飾ってあった。

生活を楽しむ家

生活を楽しむ家 Isabelle Rozot
イザベル・ロゾ
isabelle-rozot.com
上、右から ●天井の高いアパルトマンの一角がイザベルさんの仕事場であるアトリエ。昨日、新しい絵を描くためにキャンバスを壁に据えたばかりだった。●オフィス用の机はのみの市で見つけた 手作り品。引き出しの白い部分が取っ手というシャープな80年代スタイル。●ピンク色のフラミンゴは花瓶の水を飲むような配置を工夫している。●19世紀末のシノワズリーが大好きで食器は統一。朱色が気に入って購入した長テーブルはドイツのビール祭りの時に使われるものだった!●テーブルの向こう側にあるペイントした柱が鉄製。●黒い猫の置物の横でお休みする彼女の愛犬は中国種。

TEXT:中平美紀 PHOTOS:Jacques Pepion
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