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***No.51


『菊乃井』主人 村田吉弘さんの
「蒸し料理の極み」
The master of signature Japanese restaurant “Kikunoi”, Mr Yoshihiro Murata, schooled us in the 'Best of Steamed Dishes'.

京都・東山に本店を構える『菊乃井』は、大正元年の創業以来、
京都を、そして日本を代表する名料亭として愛され続けてきた老舗。
今回は、その3代目主人であり、日本の料理や文化を世界に発信する活動も行なっている村田吉弘さんに、
「蒸す」という調理法の魅力や極意、さらに家庭でも気軽に作れる「蒸し料理」の作り方を教えていただきました。


写真:川田雅宏

『菊乃井』主人 村田吉弘さんの「蒸し料理の極み」


 ここ数年、「蒸す」という調理法が注目を集めている。

  日本には“蒸し料理専門店”もオープンし、また「蒸し」機能を搭載した高性能のオーブンレンジなどもあり、奥様方から人気を得ている。

  さらに、最近ではフランスのシェフたちが日本の「蒸し煮込み」という調理法に興味を持ち勉強していたりと、今や世界中が「蒸し」をムシできないのだ。 

  日本料理の世界では、昔から「蒸す」は「切る」「焼く」「煮る」「揚げる」とともに重要な調理法のひとつとされ(日本料理の基本は五味・五法・五色)、「酒蒸し」「茶碗蒸し」「土瓶蒸し」などといった“レジェンド・オブ・蒸し料理”もたくさんあるワケですが、いったい「蒸す」という調理法の魅力とは何なのだろう? 村田吉弘さんにお伺いした。

「食材を湯がいたり、煮汁の中で煮ると、栄養分とか脂とか、いろんなものがその液の中に流れ出てしまいます。でも、蒸せば栄養分が逃げ出ないため、食材の味が濃い。同じ野菜でも、湯がいたものと蒸したものでは味が全然ちがいますよね。蒸すことで、食材は自分の水分で自分を美味しくできるんです」

  村田さんは、京都の老舗料亭『菊乃井』の3代目主人。「日本料理アカデミー」の理事長や「NPO日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)」の副理事長も務める、日本料理界の“中心人物”である。

  また、作りやすく魅力的な料理を考案することでも有名で、『きょうの料理』(NHK教育)をはじめ数々のテレビ番組に出演。家庭料理のいろんなアイデアを提唱し、多くの視聴者から支持されている。

  そこで今回、村田さんに神奈川の食材を使って家庭でも気軽に作れる「蒸し料理」を考案いただいた。

  作っていただいたのは、葉山牛と小田原のたまねぎを使った「和風ローストビーフ」、湘南のトマトを使った「トマト蒸し」、小坪港であがった鯵を使った「鯵の酒蒸し」の3品。

  いずれの料理も奥深く美味しくて、なおかつ作り方もカンタン。中でも、特にオススメなのが、「和風ローストビーフ」だ。
「ローストビーフ」といえば、普通は肉の塊をオーブンで焼いたもののことだが(“ロースト”だから)、村田さんは「蒸し器で蒸すことで、家庭でも簡単にローストビーフの味わいが楽しめます」と。  

  この料理のポイントは、肉を煮汁に漬けて蒸し上げるということ。それにより、オーブンで焼くよりも火の入りがゆっくりになり、肉の中がしっとりロゼに仕上がる。また、脂が外に逃げ出ないため、肉が全然目減りせず、なおかつ肉そのものに煮汁の味がしっかり染み込む。さらに、肉と一緒にたまねぎなども漬けておけば野菜も簡単に調理できるので、これはぜひお試しいただきたいと思います。

「少ない材料と簡単な手順、これが家庭料理の基本。レシピに材料や手順がたくさん書き込まれていると、それだけで作るのが嫌になってしまいます。どんなに美味しいレシピであっても、作ってもらえなければ意味がありません」と村田さん。

  さらに、最近は“料亭の味をご家庭で”的なレシピを目にすることも少なくはないが、村田さんは「家庭の料理と料理屋の料理はまったく別物」だと語る。

「料理屋の料理は、不特定多数のお客さんのために、いつ何時お越しになられても満足してもらえるように作るもの。でも、家庭料理って、お父さんや子供の体調、さらに朝と昼にどんな食事をしたかも分かったうえで、その人のためにお母さんが作るもの。だからこそ、栄養バランスが整っていて、何にも捨てるものがなく、なおかつお母さんに手間がかからない料理がいちばん理想的なんです。そのために、複雑なレシピをいかに簡素化できるか、いかに分かりやすいレシピを作れるか。それを考えるのも、我々プロの料理人の仕事だと僕は思っています」

  ちなみに、最後に村田さんは、神奈川の食材についてこう語ってくれた。

「神奈川が鯵の産地であることは知っていましたが、野菜も牛も本当に美味しい。東京の近くに、こんないい食材がたくさんあることを知って驚きました」

  地元の食材を知り、そして、地元食材に誇りを持つことも、美味しい料理を作る“極意”のひとつ。さあ、みなさんもぜひ、神奈川の食材を使って美味しい蒸し料理をお作りくださいませ。

PROFILE
村田 吉弘さん
1951年京都生まれ。赤坂にも支店を持つ、京都の老舗料亭『菊乃井』の3代目主人。日本はもちろん世界各地で講演や講習会を行うなど、日本料理の魅力を伝える活動も積極的に行う。また、若手料理人の育成にも貢献。今年6月から、『菊乃井』で修業を積んだシェフ2名が、ロンドンで最大の日本食レストラン『酒の花』のシェフ・スーシェフとして腕を振るっている。

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村田吉弘さんが神奈川食材を! 家庭で作れる「蒸し料理」


和風ローストビーフ
1.葉山牛&小田原産たまねぎを使った
 「和風ローストビーフ」

〈材料(作りやすい分量)〉
牛ロース肉 500g、 たまねぎ 1個、 酒 340cc、 水 340cc、 濃口醤油 56cc、 淡口醤油 28cc、 砂糖 25g
〈作り方〉
1. 酒、水、濃口・淡口醤油、砂糖を合わせて火にかけ煮切る。
2.1に牛肉と櫛(くし)型に切ったたまねぎを入れ7分間蒸し、一度肉の上下を返してから8分間蒸し上げる。
3.2の牛肉とたまねぎを地からあげ冷ます。
4.地が冷めたらこして3の牛肉とたまねぎを漬け込む。
5.食べ易い大きさに切り出し、器に盛れば完成。
和風ローストビーフ 〈POINT!〉
肉は煮汁に漬けた状態で蒸し器に投入すべし

「食材は、温度が上がるときではなく下がるときに味が付くんです」と村田さん。煮汁に漬け込んで蒸すことで、肉や野菜にしっかりと味を染み込ませよう。
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トマト蒸し
2.湘南産トマトを使った
 「トマト蒸し」

〈材料(2人分)〉 
卵 1個、ダシ汁 200cc、淡口醤油 10cc、トマト 1個、ウスターソース 大さじ1/2、万能葱 少々
〈作り方〉
1.卵を割ってほぐし、ダシ汁、淡口醤油を入れてよくかき混ぜ、ペーパータオルでこしておく。
2.器に櫛(くし)型に切ったトマトを入れ、1を100cc注ぐ。
3.蒸気の上がった蒸し器に2を入れ、蒸し器のフタをずらして12分蒸す。
4.蒸し上がったらウスターソースをかけ、みじん切りにした万能葱をふって出来上がり。
トマト蒸し 〈POINT!〉
卵はしっかりこすべし

卵液は、こし器でこすことで卵のこしが切れ、なめらかでツルリとした舌ざわりに。本腰入れて、しっかりとこそう。
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鯵の酒蒸し
3.小坪港であがった鯵を使った
  「鯵の酒蒸し」

〈材料(一人分)〉
鯵 1尾、酒 30cc、豆腐 1/4丁、昆布 10cm角1枚、椎茸 1/2枚、絹さや 3枚、つゆ生姜 10cc 青柚子 少々、ダシ汁 120cc、酒蒸しの汁 30cc、淡口醤油 5cc
〈作り方〉
1.鯵は頭と尾を落とし、内蔵を洗い出し、水気を拭く。
2.耐熱皿に昆布を敷き、鯵、豆腐、椎茸を盛り、蒸し器で15分蒸す。
3.蒸し上がったら、ダシ汁、酒蒸しの汁、淡口醤油を合わせておく。
4.器に昆布、鯵、豆腐、椎茸、茹でた絹さやを盛りつけつゆ生姜をかけ、青柚子をあしらう。
鯵の酒蒸し 〈POINT!〉
鯵は塩を振って冷蔵庫で寝かせるべし

下ごしらえをした鯵は、塩を振って冷蔵庫で1時間ほど寝かせておこう。そうすることで水気が抜け、身も引き締まります。
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料亭で味わいたい「蒸し料理」いろいろ


蒸し料理 蒸し料理

@「新茶蒸し」(左)
旨み成分と苦み成分を持ち合わせ、実際に食べてもやわらかくて美味しい新茶の玉露を料理に利用できないか?という発想で考案されたのが、この「新茶蒸し」。お茶には消臭効果もあります。
※新茶が手に入る時期(5月)限定のメニュー

A「七宝蒸し」(右)
すっぽんやフカヒレ、アワビ、貝柱などの具材をすっぽんの濃厚なダシの中で5時間?6時間かけて蒸し煮込みにすることで、いろんな旨みエキスが器の中に凝縮。お客さんからのリクエストも多い、『菊乃井』の名物というべき一品です。

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東京・赤坂で「菊乃井」の味をご堪能あれ


菊乃井

「日本料理を、そして料亭の良さをより多くの人に味わってもらいたい」との思いから、2004年にオープン。竹林に包まれた趣きある石畳の路地を歩き、引き戸をあけると、目の前に広がるのは大きな檜のカウンター。料理はもちろん、店の佇まい、しつらえの贅沢さや風情、女将のおもてなしなど、すべてに京都の料亭文化が息づいている。日常とは少しちがった空間で、京都の老舗料亭の真髄をゆっくりとお楽しみいただけます。

赤坂 菊乃井
<住所>東京都港区赤坂6-13-8
<電話>03-3568-6055
<営業時間>昼 正午入店
夜 17:00〜21:00まで入店
<定休日>日曜日(年末・年始休みあり)
http://www.kikunoi.jp/

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