***No.48
ソムリエ&Sake Stylist 木村 克己さんの
「とってもシアワセ鍋時間」
‘Sommelier & Sake Stylist’ Mr Katsumi Kimura Presents ‘The Really Jolly Pot Hour’.
世の中には、「鍋については一家言ある」という人が多い。
なぜなら、鍋という料理には、国や地方、そして作る人ごとに、無限の調理法が存在するのだ。
さてさて、ソムリエ&Sake Stylistとしてご活躍されている木村克己さんもまた、鍋に並々ならぬ情熱を注いでいる人物のひとり。
ということで今回は、木村さんをゲストにお迎えし、とっておきの鍋の作り方を教えていただきました。
Photographs by Takashi Sakata
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1986年に開催された第1回パリ国際ソムリエコンクールで総合4位を獲得した日本を代表するソムリエであり、また日本酒や焼酎への造詣も深くSake Stylist≠ニしてもご活躍の木村克己さん。
以前にも『メディア・スパイス!』にご登場いただいているので、このへんのところは読者の皆さんの中にもご存じの方が多いかと思いますが、今回、このコラムで「鍋」をテーマにしようと思ったとき、すぐに木村さんの顔が頭に浮かんだ。それはなぜかというと、木村さんは鍋を作り続けて30年。これまでにいくつものオリジナル鍋を考案してきた鍋奉行≠ナもあるからだ。
実は私も、これまでに何度か木村さんの作る鍋をいただいたことがあるのですが、これがホント旨い! また、和食や洋食の技法・食材などを組み合わせた斬新なアイデアに「エッ!!そんな手があったの?」と、いつも驚きの連続なのであります。でも、なぜお酒のプロフェッショナルである木村さんが、鍋を作るようになったのだろう?
「鍋という料理には、無数の方法論があります。種類もさまざまですし、地方ごとに食材や味付けも多種多様。もちろん、昔から受け継がれている地方色豊かな鍋は、非常に意味のあるものだし、価値のあるものです。ただ、今は日本全国、そして世界各国の豊富な食材やお酒が手に入る時代。だからこそ、現代の物流や食材のあり方を鍋に反映させることで、この時代ならではの鍋を作ってみたいと思ったんです。料理は、時代とともに常に姿かたちを変えながら継承されるべきものですから」
さて、そんな木村さんに、『メディア・スパイス!』のためにオリジナルの鍋をお作りいただいた。その名も「焼き鯖、利尻昆布、ふんわり生鱈の創作寄せ鍋汁」。
まず驚いたのが、なんとこの鍋、「焼き鯖」からダシをとろうというのである。
「食材に含まれるアミノ酸、つまりうまみ≠ニいうものは、違う食材のもの同士を組み合わせると、足し算ではなく、掛け算のように倍加していくんです。今回の鍋では、そんなうまみの相乗効果≠狙いました。お酒、昆布、干し椎茸のうまみに、焼いた鯖の干物のうまみが加わると、もはや測定不能の鬼のダシ≠ノなりますよ」
さらに、具材にも木村さん独特のアイデアが。生鱈は、パウダー状にした吉野くず粉をまぶして熱湯にくぐらせ、それを氷水で冷やしたうえで鍋に投入するのである。
「お椀料理などに用いられる和食の技法を取り入れました。そうすることで、鱈の表面がつるりとコーティングされ、うまみや水分を封じ込めることができるんです」
で、そのお味はというと、ほんのひと手間加えただけで、鱈は煮込んでもパサパサにならず、とってもフワフワ。そしてなにより、鬼のダシ≠ェ凄かった。ちくわや豆腐などの具材の風味をグーンッとアップさせ、日本酒や焼酎、白ワインといったお酒との相性もバツグン。これはぜひ、ご家庭でもお試しいただきたいと思います。
さらに、最後に木村さんは、鍋をより美味しく食べる秘訣をこう教えてくれた。
「鍋を美味しく食べるいちばんの秘訣は、食材の調達から参加することです。ぜひ、お休みの日に家族や近所の方、あるいは友人を誘って、役割分担を決めてみんなで作ってください。鍋料理って、ひとつひとつの細かな要素が味わいにもの凄く影響するわけではないですし、たとえ失敗しても無茶苦茶なことにはなりません。そういう意味では、とてもフリーな料理なんです。だから、子どもはもちろん、料理を難しいものだと思っている方や、料理離れしている方が、包丁を握ったり、まな板使ったり、ダシを取ったりする練習の場にもなるんです。これは食育の一環だと思いますし、なにより楽しいんですよ。いろいろな香りが広がっていくあいだに、鼻歌を口ずさんだりしながら、みんなで鍋を作れば、その美味しさは2倍にも3倍にもなるでしょう」
鍋のシアワセとは、完成した鍋をつついている瞬間だけではない。鍋を作ろうと思った瞬間から、すでに始まっているのだ。
さあさあ、鍋が恋しいこの季節。皆さんもぜひ、ご家族や友人と一緒にシアワセ鍋時間≠過ごしましょうぞ!
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木村克己さん
1953年神戸市出身。「アラン・シャペル」「オテルリッツ・パリ」シェフソムリエカヴィストなどを経たあと、日本ソムリエスクールを創設。また日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会も創設。食に関するさまざまな分野でのコンサルタントや講演家としても活躍。 |
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