学生の頃からモデルとしてヨーロッパ各地を旅する事が多かったという出石さんは、とにかくおいしいものと料理が好きで、ファッションショーの控え室ではいつも料理の本に夢中になり、好奇心の赴くままにどんどん知識を深め、いつの間にかワインとチーズの専門家になってしまったとか。
「いつまでたっても素人発想なんです。このワインすごくおいしい、と思うと、そのワインのことをもっと知りたくなって、生産地まで訪ねて作った人に色んな話を聞きたくなる。そうすると、手軽に調べられるガイドブックも欲しくなるでしょ?ないなら、自分で作ろうと思ったんです」
出石さんのピュアな好奇心や探求心と同じようなものは、誰もが持っているだろうけど、それを軽々と実現してしまう行動力には、人並みはずれたエネルギーが必要だ。大好きなイタリアワインを語る時のきらきらした瞳の奧には、底知れぬパワーが潜んでいるに違いない。
さて、そんな出石さんをお連れしたのは、イタリアンレストランの老舗『アントニオ』。光栄なことに、創始者であるアントニオ・カンチェミ氏が料理をご用意してくださることになった。1916年、シチリア生まれのアントニオさんは、イタリア海軍最高指令長官付きのコック長として来日後、'44年に神戸で日本初のイタリア料理店をオープンさせた。マッカーサー元師の関西視察時にはシェフとして同行。また、日本で初めてエスプレッソマシンを導入したコーヒーショップを開店させる等々、日本におけるイタリア料理の歴史に数々の功績を残す人物だ。86歳にして、いまも厨房に立つこともあるというアントニオさんは、この日も自ら数々の料理をご用意してくださり、出石さんは、料理をより引き立てるイタリアワインの楽しみ方を提案してくれた。実はお二人には、時節柄イタリアでのクリスマス料理のお話を伺うつもりでいたのだが、 食事の間、アントニオさんのシチリアの食への郷愁が話題の中心だった。「240歳までは神様がくれたボーナスで元気!今度はもっと本格的なシチリア料理を食べてくださいね」。時々ユーモアを交えながら笑顔が広がる。ご長男のヂャーコモさんは、「シチリアの話ばかりで申し訳ありません。でも、自分の育った町の事ばかり話す、これがイタリア人。郷土自慢がイタリア人の会話なんですよ」と、教えてくださいました。そして出石さんは、「まるで、ちょっとノスタルジックなイタリア映画を観ているようでしょ? ご年輩になってからも、アントニオさんのように情熱的で素敵な方がイタリアにはたくさんいるんですよ」
イタリアの魅力は、まだまだ奧が深そう。とりあえず、おいしい料理とワインをもっと楽しむことから始めてみませんか。
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