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Media Spice!
  ■音楽の贈り物

 第22回
 戦争でつらい思いをしている人にルイ・アームストロングの名曲を

 質問に答えるマーク・ライリーさんにバーシアさんがジョークで突っ込みを入れ、こわもてのダニー・ホワイトさんが思わず微笑む。インタビュー中のそんな姿から、3人が再会を心底、楽しんでいる様子が伝わってきた。マット・ビアンコの最新アルバム『マッツ・ムード』はオリジナル・メンバーによる20年ぶりのリユニオン作だ。
  マット・ビアンコは1984年に『WHOSE SIDE ARE YOU ON(探偵物語)』でデビュー。タイトル曲がヒットし、いきなり成功したが、直後にダニーさんとバーシアさんが脱退。残ったマークさんが新メンバーを迎えて、バンドを存続させている。その後、バーシアさんはダニーさんのサポートを得て世界的な名声を獲得し、マット・ビアンコもつねに第一線で活躍してきた。
「その間は電話で話すこともほとんどなかった。バーシアとはクラブで一度、偶然、会ったきりだったよ。3人で連絡を取り合い、再会したのは日曜日のランチで、それぞれがパートナーを連れていった。まっさらなところから新しい人間関係を築いていこうと考えたんだ」(マークさん)
  バーシアさんが話を引き継ぐ。
「20年前はいっしょにやってもいいし、だめならやめてもいいという気持ちだった。経験を積み、もう少し大人になったいまは、3人でいるときにリラックスできるようになっている。3人がいまほど親密ないい関係になったことはないんじゃないかな」
  ボッサのリズムと哀愁漂うメロディを組み合わせた「Ordinary Day」は、バーシアさんの軽やかなヴォーカルが心地よい。現在のマット・ビアンコだから表現できる音楽だ。
「音楽の面では20年前も相性が良かったけれど、当時と違うのはバーシアが作詞作曲に参加したり、何かの決断を下すときに意見を出すこと。今回はいろいろな面で関わってもらいたかったんだ」(ダニーさん)「Slip & Sliding」におけるマークさんとバーシアさんのツイン・ヴォーカルも聴きどころ。息が合っているばかりでなく、二人の声が重なったときの響き方がいい。
「相性がいいとはよく言われる。曲を書くときにも意識しているんだ」(マークさん)
  ところで、バーシアさんは90年のソロ作に収めた「Copernicus」で 、“ロンドンでもワルシャワでもニューヨークでも、私たちの愛は世界中で受け入れられるでしょう”と歌い、それは東西冷戦が終結した当時の高揚する気分にぴったりだった。
「私がポーランド人だということをみんなに伝えたくて書いた曲です。ローマ法皇もショパンもキュリー夫人もコペルニクスもポーランド人なんですよ」
  贈り物にしたい1曲は、「今日中に答えるから待ってほしい」と、3人で真剣に選んでくれた。レコード会社のスタッフによると、夕食のときに話し合って、決定したそうだ。
  ルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」を、いま、中東の戦争でつらい思いをしている人に。素晴らしき世界になる日が来ることを祈って。

text by Akira Asaba
photo by Atsuko Takagi


 すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。
 20年ぶりのリユニオン作をリリースしたマット・ビアンコが
 贈り物にしたいほど大好きな音楽を紹介してくれました。


LOUIS ARMSTRONG
『WHAT A WONDERFUL WORLD』
67年と68年に録音。「この素晴らしき世界」はイギリスのチャートで1位を獲得。

MATT BIANCO

1984年、ジャズ、ラテン、ファンクをポップに融合した『WHOSE SIDE ARE YOU ON』でデビュー。2004年、Mark Reilly、Danny White、Basia Trzetrzelewskaのオリジナル・メンバーが集まり、『MATT'S MOOD』をリリース。

『MATT'S MOOD』
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