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生活を楽しむ家

 ミッシェル・ジャンジャムブルさんが住むアパルトマンは、パリ18区の多くは移民が経営する商店街のど真んなかにある。2間の小さなアパルトマンで、都会に住む日本人には馴染みやすい大きさともいえる。パリのアパルトマンは古いゆえ、エレベーターがなかったり、水まわりの設備に乏しい物件が多い。しかし、古きを愛し、うまく工夫するのがパリジャンの知恵。彼女がこのアパルトマンを10年前に購入した時、バスルームがなく、縦長のキッチン・スペースの半分をバスルームに改造した。だから今あるキッチンは1uほどのミニサイズ。でも、小柄なミッシェルさんとの相性はとても良さそうだ。

 最近は本業のスタイリストの活動を控えめにするなか、彼女の趣味、絵画のコレクションにもっぱら熱中している。パリ近郊には古もの市が多く出る。「今朝も朝はやくに目が覚めて、のみの市2つに行ってきた。今日も2枚見つけたのよ」。幼い時から、両親に連れられて見ていたのみの市。初めて自分の絵を手に入れたのは16歳の時だった。のみの市付近の溝のなかにまっぷたつに割かれた少年のポートレートを見つけ、父親が修復してくれた絵を今もずっと壁に飾ってある。そして気が付いたら‘男性のポートレート’を集めていた。高価なものは無理でも、自分が惹かれる絵を探し続けている。その1枚、1枚にエピソードがある。まだ飾らずにしまってあった絵のなかから、ゴソゴソと1枚を取り出し広げて見せるミッシェルさん。「ほら、この絵の裏を見て。「C・PISSARRO(ピサロ)」ってサインがしてあるでしょう。もしやと思って、ドゥルオ(パリにある競売会社)の専門家に見てもらったら、偽物だった。でも、そんなワクワク期待しながら待つ時間が楽しい」。

 最近は市民講座にある「絵画修復」クラスに通っている。だから、のみの市で見つけたら傷ついた絵であろうが、自分で修復することを考えて購入する。午後の日差しがきれいなダイニングでひとり、かつて存在しただろう男性のポートレートに少しずつ新しい絵の具を重ねてきれいにする楽しみ。古き時代のものに愛情を注ぐパリの人の生活である。


生活を楽しむ家

生活を楽しむ家 ミッシェル・
ジャンジャムブルさん
Michele Gingembre
上、左から ● ミッシェルさんは小さなフォーマットの絵を集めている。小さな空間にミニサイズの絵の集合体がぴったり。●右側壁の上左の絵が16歳の時に初めて入手した絵。よく見ると中央に修復された跡がある。背もたれ椅子は祖父母の代から使っているナポレオン3世様式。華奢なデザインが魅力。●チェストはのみの市で見つけ、自分でペイントした。黄色のスープカップは貴重なアンティークのChoisy-le-Roi(ショワジー・ル・ロワ)陶器。●このキャビネものみの市で購入。黒色のペイントと鍵に結んだリボンが粋。●ミニキッチンにもガラス類のコレクションがたくさん。小さくかわいらしい家具がミッシェルさんにお似合い。

TEXT:中平美紀 PHOTOS:Jacques Pepion
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